身体を覆う風

扇風機による一定風速の風は停滞感を感じるが、変動する風はさわやかさを感じると云われている。そして、変動する風は一定速の風と比較して、風の速度を大きく不安定で動的さを感じ易くなる。

風の変動の大きさや変化の周期は皮膚温の動きを生じさせる。皮膚温の変化は時定数が大きく、皮膚温の時間的な変化は環境の変化に比べて多くの時間を要する。したがって、風の変動周期が短いと、皮膚温の反応にとっては一定風速の風と同じような環境となってしまう。このような場合には、変動する風の身体への影響は最大風速で人体影響を説明できることとなる。

身体が感じる風は、風を受ける身体の面積や風を受ける身体部位、平均風速、最大風速、風の移ろい、風のゆらぎの周期、身体周囲の空気の温度と吹いてくる風の温度との差などに影響されている。身体が受ける風の量を比較するには平均風速が分かり易いが、そのばらつきとなる乱れも重要である。

風を身体が受けると身体からの放熱量が増えて皮膚温が下がる。一定風と変動風で平均風速が同じ風を身体に当てることを想定した場合には、同じ温冷感覚を示す環境では、風の乱れの大きさとなる最大風速の影響による放熱量の増加が起因して、高い気温でも同じ効果を得ることができる。皮膚温の反応は数が時定数が大きいと述べたが、風の移ろいの最中に皮膚温が高い状態で風速が速くなると放熱量が多くなる。すなわち、皮膚温の低下が少なく涼しさを喚起しやすく快適感が向上し、長い時間風に当たっても時間とともに身体が冷えすぎることが少なくなると云える。

扇風機などの強制的に風を身体に当てる身近な機器の多くは、身体の一部に風が当たってしまう傾向がある。即効的な環境緩和や積極的な快適感を追求するには効果的であるが、長時間の穏やかな消極的な快適感を求めるには不向きな場合もある。身体の部分的で不均一な風に長時間曝されると、体温調節と温熱感覚のズレが起こるなど体調が不順となる場合もある。

身体にまんべんなく緩やかな移ろいを伴う風を受けるような状態がつくれば、長い時間風に当たっても体調が不順になることが少なく、身体にとっておだやかで快適な環境となり得ると云える。