暖身と採暖

暖房は室内空間全体を均一に暖めることを示しています。しかし、いくら暖房エネルギーを使っても空間を囲っている器がエネルギーを逃がさない性能を持っていないと、エネルギーを捨てながら暖房をしないといけません。地球環境問題から低カーボン社会を実現するために世界各国が一定の目標値をもち様々な活動をしています。日本もエネルギーの節約に向けて様々な活動をしています。

現在のエネルギー消費の状況を鑑みると、産業用のエネルギーよりも民生用のエネルギーの抑制を検討しないと世界に対する目標値の実現は厳しいかもしれません。生活のレベルが上がったものを下げることはなかなかできることではありません。民生用のエネルギーの多くは暖冷房に使われています。暖冷房の多くはエアコンなどの空気を媒体とする熱の伝え方でおこなわれています。したがって、空間を囲っている器、すなわち建物の断熱性能と気密性能が重要となります。しかし、既存の建物をすぐに建て替えることなどできるものではありません。必ずしも暖冷房に適した住まいではないにしても、満足感などを感じながら快適に健康に過ごすことが重要となります。

室温が15℃を下がるとあまり身体を動かしたくなります。10℃を下がると身体を動かさなくなります。いわゆる、いろんなことをするのが躊躇われる状態になります。それでも昔の人は生活ができていました。生活レベルの差というものがあるのでしょうが、寒い空間でも少し我慢して行動をすると終わった後に身体を暖めることができるという期待感や行動を完結できたという満足感から快適感を得ることもできます。この少しの間身体を暖める行為に採暖や暖身という状態があります。もともと空間全体を均一にすることは極めて困難で、室内は温度差があり不均一な状態になっています。足下付近は冷たく、天井付近は暖かい状態となっています。そして、窓の付近は極端に冷たい状態となっています。したがって、空間全体を温めるという考え方ではなく、身近な空間のみを暖めて環境を改善することの方が効果的だと考えられます。

例えば昔の生活では団らん空間の中心に暖炉があり、その近傍に集まり身体のみを暖める暖身という採暖行為がおこなわれていました。ちなみに、放射によって身体を暖めるという機能を持っています。室温は低くても満足感の得られる空間がつくられていました。火鉢というものもその一つです。動きが取れなくなりますが、こたつを利用することも暖身という採暖行為です。こたつも狭い空間内では放射によって身体を暖めています。効率的に仕事を片づけて身体を暖める、家族が身を寄せて一時を過ごす環境がありました。ここまで極端に生活レベルを変化させることはできないにしても、空間内に器具を持ち込んだり、空間内で器具の位置を変えることで効果的に身体を暖めることができます。空気を媒体としない放射による熱の伝え方をすれば、断熱性や隙間の多い空間でも効果的に暖身という採暖行為ができます。